ストック素材サイト徹底分析~iStock編

ストック素材サイト紹介

私が実際に販売しているストック素材サイトについて、それぞれの特徴などをクリエイター目線で紹介していきます。

今回は、iStock(アイストック)をご紹介します。

運営は、世界中に販売網を広げるアメリカのGettyimages(ゲッティイメージズ)。業界でも指折りの超大手ストックフォトサイトです。

写真素材、ロイヤリティフリーの画像、イラスト素材、ベクター素材、映像 - iStock
iStockには、多様なグローバルコミュニティが調査・撮影した数百万点もの独占ストックフォトや映像、ベクター素材、そしてイラスト素材があります。© 2023 iStockphoto LP.

iStockの特徴

よく売れる

iStockの一番大きな特徴はよく売れること。

Gettyimagesが持つ世界的な販売網のたまものでしょうか。毎月の販売レポートで、販売国などの情報を確認できるのですが、日本やアメリカはもちろん、それ以外でもさまざまな国で作品がダウンロードされています。

写真だけでなく動画もコンスタントに売れています。

ただし、後述のように、iStockのロイヤリティ率は他社と比べて低いため、ダウンロード数が多くても報酬額は思ったほど伸びません。

私の場合でいえば、毎月の報酬はAdobe Stockに及ばないことが多いです。

審査に通りやすい

他のフォトストックと同様、iStockにおいても、作品の登録申請をすると、販売条件を満たしているかどうかの審査にかけられます。

iStockは、作品の品質に関する審査の基準が、他社と比べると緩い感じがします。つまり、審査に通りやすいということです。

ちょっとピントが甘いかな、と感じる写真でもたいてい通ります。

また、ざらざらしたノイズが多少あっても大丈夫。薄雲に覆われた満月をISO感度高めで撮影したら、少々ノイズが目立ってしまったのですが、問題なく通りました。

さらに、似たような作品を出したときの類似判定もやや甘めですね。なので、同じ被写体の作品群を一度に提出しても、類似を理由にほとんど却下されてしまうようなことはありません。

納得いかない理由で却下されるとイライラがたまってしまうものですが、iStockでは出した作品がほぼすべて審査に通りますので、ストレスなく快適です。

ただし、この審査に通りやすいというのは、ノイズやピント、構図など品質に関する審査に限った話です。

肖像権、著作権、商標権など、他者の権利に関連する審査については、iStockは他社より厳しいです。この点は後述します。

販売可能な素材の種類

iStockでは、写真素材、イラスト素材、さらに、動画(映像素材)も販売できます。CG画像やCG動画もOKです。

ただし、後述しますが、生成AIを使用した作品の販売については、iStockでは認められていません。

iStockの注意点

ロイヤリティ率(報酬率)の低さ

iStockで作品を販売する上での一番の問題は、ロイヤリティ率(報酬率)が低いこと。

iStockには、shutterstockやPIXTAなどと同様に、販売実績に応じてロイヤリティ率が変動する制度があるものの、これが適用されるのは、iStock専属のクリエイターに限られます。

iStock専属になってしまうと、他社では販売できなくなってしまいますから、ほとんどの方は非専属で活動されていることと思います。

そして、非専属のクリエイターのロイヤリティ率は、写真が15%、イラストと動画が20%で、販売実績などに連動せず固定となっています。

例えば、1年間に写真が1000枚以上売れても、ロイヤリティ率はずっと15%のままなんですね。

これに対して、Adobe Stockのロイヤリティ率は常に33%、ロイヤリティ率が変動するshutterstockでも年間1000枚も売れているなら30%。

このように他社と比べてみると、iStockの常時15%というロイヤリティ率は、ダントツに低いことがおわかりになるかと思います。

単価がかなり低い場合あり

どの素材サイトでもそうですが、作品の販売単価はピンキリでかなり幅があります。ユーザーの購入プラン(単品購入かサブスクリプションか)や購入されたサイズなど、さまざまな条件によって大きく変わります。

ですので、ダウンロード数やロイヤリティ率とはまた別に、どのような販売単価のものが売れたのかによって、最終的な報酬総額はかなり変動します。

何千円といった大きな単価の作品がいくつも売れると、その月の報酬総額は大きくなりますし、逆に、何十円程度の単価が低いものばっかりだと、報酬総額も少なくなってしまいます。

このこと自体は、クリエイター側で努力してなんとかなるものではなく、運みたいなものですね。

しかし、iStockで困るのは、この販売単価が異常に低いケースがあること。

1回の販売でクリエイターが得られる額(報酬単価)は、販売単価×ロイヤリティ率で計算されますが、これが0.1ドル(約15円)にも満たない場合がよくあります。

報酬単価0.04ドル(約6円)というのが結構多いですね。100回ダウンロードされても600円。実際には、こんなのばっかりということはないですが、それでも低単価の販売が多いと心が折れてしまいます。。。

もちろん、他社の場合でも同様のことは起こりうるのですが、iStockほど報酬単価が低いケースはないため、ここまでひどくはなりません。

例えば、Adobe Stockだと報酬単価の下限が0.33ドル、shutterstockでも0.1ドル。iStockと比べればかなりましです。

他者権利関係の審査基準が厳しい

先ほど審査基準は緩いと書きましたが、それはあくまでも品質面での話。

iStockでは、著作権、商標権、肖像権など他者権利に関する審査基準は、かなり厳しいです。

どう厳しいのかイメージしづらいと思いますので、具体例を挙げて説明します。

なお、以下に例として載せている写真は、すべて、iStockで却下、あるいは、一部修正を余儀なくされた作品ですが、他社では販売できている作品です。

あくまでも私の経験上での話で、似たような作品でも却下されないケースもあると思いますので、参考程度に考えてください。

人物(肖像権)

iStockに限らず、人物を被写体とする場合はもちろん、小さく映り込んでいる場合でも、モデルリリース(肖像権使用許諾同意書)を要求されることがよくあります。

知らない人が映り込んでいる場合は、許諾などもらうことは不可能なので、画像編集ソフトを用いて、その人が特定されないように姿を消したり、ぼかしをかけたりする必要がありますね。

また、他社ストックフォトでは、顔が鮮明に映ってなければOKの場合が多いのですが、iStockではさらに厳しく、後ろ姿や顔の一部のみという場合でもNGになることがあります。

例えば、この自撮りのひげそり写真。顔の一部(あご)しか映ってませんが、モデルリリースが必要と判定されました。

トリミングをして、あごの映り込んでいる範囲を減らせば審査に通るかもしれませんが、この写真ではあごの無精ひげがポイントなので、その編集はやりたくありませんでした。

(わかりやすい例とは思いつつ、我が無精ひげ面の見苦しい写真、申し訳ありません。。。)

看板・ロゴ(著作権・商標権)

他社同様、iStockでも、風景写真で映り込んだ看板や、被写体のロゴなどは、著作権や商標権侵害の可能性ありと判断されます。削除しないと審査に通りません。

下の写真は神戸中華街の風景ですが、このような多数の看板が含まれる写真では、すべてを消すことは不可能です。

iStockを含め、ほとんどのサイトで販売を断念しました(看板等の映り込みが許される、PIXTAのみで販売しています)。

被写体の形状(意匠権・特許権)

小物など静物を撮影するときに注意が必要なのが、被写体の形状です。特に、被写体に特徴的な形状がある場合には、意匠権や特許権侵害の可能性ありということで、却下される場合があります。

例えば、スマホやパソコンのボタンや端子の配置を指摘されたことがありました。下の写真の場合は、スマホの側面ボタンや背面カメラを削除することで審査に通りました。

建築物(著作権)

建築物では、まず、著作権のあるものは、プロパティリリース(撮影及び使用許諾同意書)がない限り販売NGです。

著名なランドマークは、著作権が切れていればOKになることもあります。ただし、入場料が必要な場所で撮影した写真は、プロパティリリースが求められます。

また、iStockでは、日本の風景で定番の、寺院や神社、お城などの伝統建築の写真は原則却下されので要注意です。

下の写真は大阪城天守閣です。大阪城周辺は誰でも気軽に散策できる場所ですが、天守閣の写真は上の例にもれず却下されたため、iStockでの販売はあきらめました。

乗り物

iStockでは、乗り物が含まれている写真も却下されることが多いです。

特に、日本の鉄道写真は他社ではOKのことも多いのですが、iStockでは鉄道車両はNG

このように電車の車両が被写体であったり、あるいは、映り込んでいる写真は、確実に却下されますので注意が必要です。

なお、ホームやレールなどの施設だけであれば、審査を通過する可能性はあります。

AI生成素材は販売不可

近年、Adobe StockやPIXTAなど、生成AIを使った作品を販売できるサイトが増えてきていますが、今のところ、iStockでは、AI生成素材の販売はできません。

コンテンツ要件において、生成AIを使用したコンテンツを明確に禁じているのに加え、違反した場合にはアカウントの停止あるいは閉鎖にまで言及されています。

現段階では、他社で販売しているAI生成素材を、iStockにうっかり提出してしまわないように注意しましょう。

ただ、生成AIの普及は今後も続いていくことが予想される上、iStockの運営主体であるGettyimages自身も、すでに、独自の生成AIサービスをユーザーに提供しています。

そのため、将来的には、iStockにおいても、AI生成素材の販売は認められることになるのではないか、と個人的には思っています。

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