私が実際に販売しているストック素材サイトについて、それぞれの特徴などをクリエイター目線で紹介していきます。
今回は、海外の老舗ストックフォト、shutterstock(シャッターストック)を紹介します。
その特徴を一言で言えば、「売れやすいけど報酬が低い」。売り上げの主力にはなりづらいですが、サブとしては十分利用できるサイトです。
shutterstockの特徴
よく売れる
shutterstockの大きな特徴の1つは、売れやすいこと。
クリエイター登録してから間もない、登録作品数が100に満たないときで、すでにポチポチ売れ始めていました。
同じく海外大手のAdobe StockやiStockと比べると、ダウンロードの数はやや少ないですが、毎月コンスタントに売れています。
寄稿者レベルとロイヤリティ率
shutterstockでは、その年の販売実績に応じて決定される寄稿者レベルという制度があります。
寄稿者レベルは、画像販売と動画販売のそれぞれで設定されます。
また、この寄稿者レベルに応じて、ロイヤリティ率(販売額に対する報酬額の割合)が定められています。
素材の販売数が増えるほど、寄稿者レベルが上がって、ロイヤリティ率が高くなります。画像の場合、最初のレベル1では15%ですが、レベル6になると40%まで上がります。
ただし、この寄稿者レベルは1年限りのレベルであり、次の年の初めにはリセットされます。これについては後で詳しく説明します。
審査が通りやすい
たいていのストック素材サービスでは、作品の登録時に、その作品が販売に適しているかどうかの審査が行われます。
以前のshutterstockは、この審査での却下率が異常に高く、なぜ却下されるのか謎であることも多い、ストレスのたまるサイトでした。
しかし、ここ数年でshutterstockの審査が大きく変わったようです。
ピントが大きくずれていたり、ノイズのざらざら感がひどいなどの致命的な問題がなければ、たいてい審査に通過するようになりました。
今では、審査がかなり通りやすい部類に入りますね。
また、審査を通らなかった素材も、次に説明するデータライセンスに登録することで収益化を図ることができます。
データライセンスと寄稿者ファンド
データライセンスとは、生成AIの学習など機械学習用に提供される素材のライセンスのことです。
shutterstockで通常販売している素材だけでなく、審査で却下されてしまった素材も、このデータライセンスに登録することができます。
つまり、審査に通らなかった素材も、普通の素材としては販売できませんが、機械学習用の販売で報酬を得ることが可能になります。
shutterstock全体でのデータライセンスの販売による報酬は、寄稿者ファンドという形でいったんプールされた後、売り上げへの寄与度に応じてクリエイターに分配されます。
なお、Adobe Stockなど他社でもそうですが、どの素材が機械学習用に販売されたのかなどの情報は、クリエイター側ではまったくわかりません。
寄稿者ファンドの分配時期も不明です。ある日突然、大きな額の報酬の支払いがあってはじめて、寄稿者ファンドの分配があったのを知る、という感じです。
参考までに、私の場合、2024年に寄稿者ファンドから支払われた報酬は、86.96ドルでした。
shutterstockの注意点
報酬が低い
shutterstockの一番の問題は、他社と比べて、全体的に報酬が低いことですね。
私は素材を販売する側なので、購入価格については詳しく知らないのですが、リーズナブルな値段で大量に素材を購入できる、お得なサブスクリプションプランの契約ユーザーが多いのではと推測しています。
その場合、クリエイター側から見れば、素材が販売されたときの報酬単価はかなり低いです。
また、先ほど説明したように、ロイヤリティ率が寄稿者レベルによって定まるため、販売実績が低い状態では売り上げはなかなか伸びません。
なお、shutterstockでは、Adobe Stockと同じく、報酬額の下限が定められています。
その額は0.1ドル(約15円)。素材が1点売れたときに、販売額にロイヤリティ率を掛けた値が低くても、クリエイターに支払われる額が最低0.1ドルを下回ることはありません。
ただ、Adobe Stockのそれが0.33ドルであることを考えるとかなり低いです。
ダウンロード数が多くても、そのほとんどで報酬単価が0.1ドルということもよくあります。
寄稿者レベルの年初リセット
先にも述べました、販売実績に応じて決まる寄稿者レベルですが、この制度には大きな問題があります。
一見するとPIXTAのクリエイターランクと似ていますが、両者には大きな違いがあります。
PIXTAのクリエイターランクは、現時点から遡った過去1年間の販売実績に応じたランクであるため、そう急激にランクが変わることはありません。
しかし、shutterstockの寄稿者レベルはその年限りのレベルで、次の年初めには無条件にリセットされて全員レベル1に戻ります。
つまり、前年のダウンロード数が多く寄稿者レベルが高いクリエイターも、年明けに強制的にレベル1になってしまいます。
例えば、12月にレベル5であった場合、それまでロイヤリティ率が35%であったのが、1月からレベル1にリセットされてロイヤリティ率が15%になります。
そこからまたこつこつとダウンロード数を積み上げて、元のレベルに戻るまで数ヶ月はかかるでしょう。
そのため、shutterstockでは、年前半の売り上げがどうしても少なくなってしまいます。
英語での対応が必要
shutterstockは日本語にも対応しているものの、他社と比べるとその対応は不十分で、日本のクリエイターには使いづらい点が多いです。
まず、作品を提出する際に、タイトルやキーワード(タグ)等のメタデータは英語で入力する必要があります。
私は、日本語入力可能な他社サイトで提出した作品のメタデータを流用し、Google翻訳などで英訳してからshutterstockに提出していますが、数が多いとかなり面倒です。
また、作品の中に英語以外の文字やメッセージなどが含まれている場合、その英訳をタイトルに記載しないといけません。
例えば、上の写真の場合、「印」の漢字が問題となります。そのため、タイトルの後ろに次のように英訳を入れています。
(英語タイトル)Stamping a Japanese seal on a document, (translation) a single kanji character on paper indicates “seal”
(日本語訳)書類に印鑑を押す、(翻訳)紙上の漢字一文字は「印」を表す
他に、このような英語以外の文字を画像編集ソフトで全部消すのも一つの手です。ただ、上の例では、「印」の漢字が重要な意味を持っており、残す必要があったため、英訳で対応しました。
さらに、英語以外の言語が、翻訳文で説明できないほど大量に使用されている場合も、審査で却下されます。
上の写真は、仏教のお経と数珠を被写体にしていますが、お経に無数の漢字があるため、shuttestockでは登録できませんでした(他社では登録できています)。
しかし、この例のように、特定の国や地域で使用される文字が入っているが故に、特定の文化を表現できている作品もあると思うので、この言語による却下理由はどうなのかなと疑問に感じます。
なお、これはshutterstock特有の審査基準です。他社ではこのような理由で却下されることはないので、素材の中に日本語があっても問題ありません。
その他、shutterstockからの連絡メールも基本は英文ですね。もちろん、適当な翻訳機能で和訳すればたいてい問題なく理解できるのですが、契約やロイヤリティ等に関する重要なメールも英語で来ますので、見落とさないように注意が必要です。
AI生成素材は販売不可
一部のストック素材サイトでは、生成AIを使用した作品の販売ができるところも増えてきていますが、shutterstockでは生成AIの使用は認めていません。
これは、現時点で、著作権との関係など、生成AIにはまだ不確定要素が存在することが大きな理由かと思います。
今後、生成AIの利用に関する規制や各種基準が定まってくれば、将来的には、shutterstockでもAI生成素材の販売ができるようになるのではないか、と個人的には考えています。
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