私が実際に販売しているストック素材サイトについて、それぞれの特徴などをクリエイター目線で紹介していきます。
今回紹介するのは、Adobeのストック素材サービス、Adobe Stock(アドビストック)です。
Photoshopなどのクリエイティブツールで知られる、Adobeが運営しているということもあって、一貫してクリエイターに対するリスペクトを感じます。
得られる報酬も他社よりも高め。自分の作品を販売してみようかなと思ったら、真っ先に検討したいサービスです。
Adobe Stockの特徴
よく売れる
Adobe Stockの大きな特徴の1つは、他社と比べてよく売れること。
売れ行きは素材のジャンルや質に左右されますし、そもそも登録数が少ないとなかなかダウンロードはされませんが、例えば200ぐらい登録すればポチポチと売れ始めるのではないかと思います。
参考までに、私の場合は、素材を100ぐらい登録したところではじめて素材が売れ、さらに、登録数が4000ぐらいで毎月のダウンロード数が平均100回前後まで増えました。
これでも、登録数に対してのダウンロード数は少ない方かと思います。得意とする素材のジャンルによっては、数倍以上売っている方もいるでしょう。
iStockやshutterstockも売れやすいサイトですが、私の感覚ではAdobe Stockはそれ以上ですね。
Photoshopなど、Adobeのメジャーなクリエイティブツールとの親和性が高く、Adobeユーザーが購入する機会が多いからなのかなと、個人的に推測しています。
ロイヤリティ率が高い
他社と比べて、ロイヤリティ率(販売額に対してクリエイターに支払われる報酬額の比率)が高いことも、Adobe Stockの大きな特徴です。
具体的には、写真やイラストは33%、動画は35%。
例えば、iStock(写真素材・非専属クリエイターのケース)やshutterstock(写真素材・実績レベル1のケース)のロイヤリティ率が15%であるのと比べると倍以上です。
素材の売れやすさと相まって、クリエイターにとって売り上げの主力となってくれるのは間違いありません。
最小ロイヤリティ量(報酬の下限保証)
Adobe Stockのロイヤリティに関して他に特徴的なのが、最小ロイヤリティ量が設定されていることです。
この最小ロイヤリティ量というのは、1回の販売でクリエイターに支払われる報酬の下限保証額のことで、過去の販売実績によりますが最低でも0.33ドル(約50円)です。
素材が1回ダウンロードされたときにクリエイターがもらえる報酬額は、基本は、販売額にロイヤリティ率をかけた金額となりますが、この額が非常に少ない場合であっても、上の最小ロイヤリティ量の額がもらえます。
他社だと、せっかく素材が売れても、その報酬が0.1ドル(約15円)とか、もっとひどいと数円にしかならないこともあり、がっくりきてしまいます。
1回のダウンロードで最低でも50円もらえるのは、本当にうれしい限りです。
Adobe Stcokのロイヤリティ率と最小ロイヤリティ量の詳細
取り扱っている素材の種類が豊富
Adobe Stockでは、写真をはじめ、さまざまな種類の素材を取り扱っています。ただ、曲などの音声素材は販売できません。実写だけでなく、CG画像やCG動画も販売できます。
- 写真
- イラスト
- 動画
- ベクター素材
AI生成素材の販売
素材の種類に関して、もう1つ特筆すべきは、Adobe StockはAI生成素材の販売に積極的という点ですね。
AI生成素材に対して慎重なサイトもあるなか、AdobeがAdobe Fireflyという生成AIを独自開発していることもあり、Adobe Stcokは、素材サイトの中でAI生成素材販売の先駆者です。
なお、PhotoshopなどAdobe製品のサブスクリプションを契約している場合は、Adobe Fireflyを無料で使えたりします。
私も時折、Adobe Fireflyを使ってAI生成素材を作り、Adobe Stockで販売しています。
ボーナスプログラム
ボーナスプログラムとは、Adobe Stockに登録するクリエイター(コントリビューター)に対する特典のことです。
具体的には、前年度の販売実績に応じて、adobe Creative Cloudのサブスクリプションプランが1年間無料となります。
つまり、PhotoshopやLightroomや、Illustrator、Premiere Pro、After Effectsなどのクリエイティブツールを、無料で使えるようになります。
ストック素材を作るクリエイターなら、たいてい何かしらのツールを使用することが多いと思いますので、このボーナスは大変ありがたいですね。
この辺りにも、Adobeのクリエイターに対するリスペクトを感じます。
なお、ボーナスプログラムが適用される販売実績の条件については、毎年少し違っているのですが、2023年度は、年間のダウンロード回数が200回以上でいずれかのプランが無料。さらに年間6200回を超えればコンプリートプランが無料で、どのツールも使い放題。
年間200回ダウンロードというのは、最初のうちはなかなか達成するのが難しい条件ですが、私の場合は創作活動を続ける上でよい目標となりました。
Adobe Stockのボーナスプログラムに関する詳細は、このページの「ボーナスプログラム」の項をご確認ください。
無料コレクション
無料コレクションは、Adobe Stockが購入ユーザーに無料で提供される素材のコレクションのことで、通常販売されている素材と同様に、商用利用も可能です。
登録作品の数が増えてくると、年に1回、Adobe Stockから、自分の作品が無料コレクションにノミネートされた旨の連絡がきます。
無料コレクションの期間は1年間。その期間内は、コレクションに採用された作品は販売されず、販売による報酬は得られません。
その代わり、無料コレクション採用に対する特別報酬が前払いで支払われます。
1つの作品が無料コレクションに採用された場合の報酬は、写真・イラストの場合は5ドル(約750円)、動画の場合は8ドル(約1200円)。
なお、ノミネートされた作品の一部または全部について、無料コレクションへの提供を拒否する(オプトアウト)することもできます。
しかし、普段からよく売れている作品はそもそもノミネートから除外される仕組みになっていますので、上の報酬額を考慮すれば、ノミネートされた作品については、販売するよりも無料コレクションに採用された方が得かと思います。
ただし、ノミネートされた作品すべてが無料コレクションに採用されるわけではありません。というよりも、採用される率は結構低く、全く選ばれないこともあります。
どの程度採用されるかは登録作品数などにもよるとは思いますが、参考までに、無料コレクションに関して、ここ数年の私の実績を紹介します。
2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
ノミネート数 | 954 | 918 | 1466 | 1952 |
採用数 | 84 | 76 | 62 | 64 |
報酬額(ドル) | 420 | 380 | 310 | 320 |
これは写真素材に関する実績です。イラストと動画に関してもノミネートはされているのですが、まだ無料コレクションに追加されたことはありません。
おかげさまで、毎年、この無料コレクションだけで、300ドル(約45000円)以上の報酬を得ております。
Adobe Stockの無料コレクションに関する詳細は、このページの「無料コレクション」の項をご確認ください。
生成AI学習に対する報酬
Adobeは、Adobe Stockに登録されている作品を、独自開発の生成AIであるAdobe Fireflyの学習に用いています。
そのAI学習に使用した作品のクリエイターに対しては報酬が支払われます。この報酬制度は2023年から始まりました。
ただ、どの作品がAI学習に使用されたのかはクリエイターにはまったくわからず、報酬率とかもブラックボックス。
ある日突然、メールがきて報酬が支払われてはじめて、自分の作品がAI学習に使用されたのを知る、といった感じです。
これについても、参考までに私の実績を紹介します。
2023年 | 2024年 | |
報酬額(ドル) | 212.38 | 168 |
この報酬額が高いのか低いのか、判断材料が少なすぎてよくわかりません。学習に使用された回数や報酬単価など、もう少し情報を開示してほしいなあとは思います。
また、報酬制度そのものも、AI学習に関する状況によって、今後変わっていきそうな感じがします。
Adobe Stcokの注意点
審査について
却下理由がわかりづらい
Adobe Stcokは、iStockやPIXTAなどと比べると、特に品質に関する審査基準がやや厳しい感じがあります。
さらに、却下された場合の理由として、ほとんどが「品質の問題」としか示されず、具体的に何がどう悪いのかがわからないこともよくあります。
ある作品について、他のストック素材サイトではすべて審査に通っているのに、なぜかAdobe Stockだけ却下されるということもありますが、それが「品質の問題」の一言だけだと、どうしたらいいのか対処に困ってしまいます。
ノイズに注意
品質に関して、まず、意図しないピントのずれや手ぶれは論外なのですが、その他に注意すべきなのがノイズです。
例えば、こういう暗い場所で撮影した場合に、ざらざらしたノイズがのりやすくなります。
この写真は審査を通過しましたが、これと同じシリーズの作品の一部が「品質の問題」という理由で却下されてしまいました。
ノイズを抑えるためにはISO感度を低くするのが有効ですが、そうなるとシャッタースピードが遅くなってしまいますので、三脚を使用するなどして手ぶれを防ぐ必要がありますね。
三脚を使えず、ISO感度を上げざるを得ないときは、Photoshopなどのツールを使ってノイズの低減を試してみましょう。
ロゴや商標の写り込み
品質以外では、「知的財産権の侵害」という却下理由が多いでしょうか。
「侵害」と言われるとちょっとドキッとしますが、この却下理由は、他人の作品を盗用するような悪質な場合には限りません。
販売されている素材の中に、他人の制作したアート、イラスト、ロゴなどが含まれていると、購入した人がそれを商用利用したとき、制作者の著作権、意匠権、商標権を侵害するおそれがありますね。
例えば、イラストが描かれた小物を撮影する場合などに気を付けましょう。
また、街の中で撮影する場合にも注意が必要です。建物や通りに掲げられた看板、通行人の衣服のイラスト、走行する車のロゴなど、さまざまなものが写り込んでしまいます。
このような写り込みがどこまで許容されるかの判断は、素材サイトによって異なるのですが、この点、Adobe Stockは厳しい方ですね。
こういう街の風景では、あちこちのビルに大小さまざまな看板やロゴがあるのですが、Adobe Stockの審査を確実に通すためには、面倒でもPhotoshopなどでロゴを全部消すのが無難です。
スパム判定に注意
これは、そうよくある話ではないのですが、適用されてしまうとやっかいなのでご紹介しておきます。
Adobe Stockの却下理由の説明において、下記の記載があります。
「類似または同一のコンテンツのコピーを複数提出すると、スパムとみなされる場合があります。 モデレーションチームは類似コンテンツを却下します。スパムとみなされると、アカウントがブロックされたり完全に閉鎖されたりする場合があります。」
例えば、同じ被写体で、露出や深度、構図を少し変えた作品を、一度に多数アップロードとしたときに注意が必要です。
私はこの判定を一度食らったことがありまして、本当にアカウントが一時凍結されました。
上のような似たような構図の画像を、一度に10枚以上もアップロードしたところ、数日後にスパム判定された旨のメールが届き、自分のアカウントのダッシュボードにアクセスできなくなりました。
急遽問い合わせをして事情を説明し、以後は作品を精査して出すことを約束して、幸いにも数日後には凍結解除されました。
(一時的とはいえ、こんな形で収入源を絶たれるとは。突然アカウントをBANされて途方に暮れる、YouTuberの方たちの気持ちがよくわかりました。。。)
しかし、類似かどうかの判断は、Adobe Stock側の審査のさじ加減によるので、クリエイター側では正直よくわかりません。
そのため、Adobe Stockに一連の作品群を提出する場合は、一度に多くをアップロードするのではなく、まずは少数で試してみて、その審査結果を見てから、続けて出すか精査して絞るかを判断するとよいですね。
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